好きなものを好きと言える人

 

 

幼稚園の時、名前の頭文字に「さ」が付きそうな、自信家でちょっと冷たそうな女の子と同じクラスだっだ。

 

朝の会で、その子は「好きな色は水色です。」と言った。

 

その時クラスのみんなが「おお〜」と意外、珍しいというような声を上げた。いや実際のところは分からないけど、私の記憶の中では確かにみんなそうゆう反応をした。

 

みんなのお気に入りの色は決まってピンクだった。お姉ちゃんは赤が好きと言ってたけど、祖母がよく買ってきてくれるおもちゃの景品だのお菓子だのアクセサリーから、いつも私がピンクの方を選ぶものだから、仕方なく自分を納得させるためにそう言っていたのだろう。とにかく女の子はみんなピンクが好きだった。私も、私の好きな色は何色だろう?と考えるより前に、とにかく絶対にピンクだったのだ。

 

それなのにあの子は、はっきりと水色が好きだと言った。

 

17年経った今も、ときどきあの子を思い出すことがある。

 

今の私には、確固たる自信を持って好きと言える何かができただろうか。